満ちているもの

ルドン展をやっていたので三菱一号館に見に行く。

木炭画をすごく近くから目を凝らして見たら、背景の部分の線の中に0.3mmくらいの大きさの文字が並んでいるように見えた。(疲れか、乱視が激しいのか…。なぜ今日は単眼鏡を持って来なかったんだろう。)
文字で無いにしても、空間が抜けて行くようなところをなぜか執拗に細く描きこんでいる事は確かで、油絵の場合も筆数、色数を重ねる事で空間は決してスカッとせず、モタモタしっとりしているのである。
これは、表面的な見え方に反して、精神的には「地と図」が無い絵なのかもしれないと思う。
一見、「地」と思われる部分も、微生物だか、モナドだか、エーテルだか、魂だか、とにかく良く分かんない物が充満しているに違い無い。

以前テレビで物理学者の人が、カエサルが臨終に呼吸した酸素原子を地球全体の酸素原子の量と比較して計算すると、私たちは、必ず何千個くらいはカエサルの臨終の酸素原子を呼吸する事になると説明していた事がある。でもって、それは物理学的なザックリ計算だと、結局カエサルだけではなく、人類誕生以来の全ての人が呼吸した酸素を全ての人が呼吸するくらいの割合らしい。

ルドンの描く空間って、そういうもう死んでしまった人類誕生以来の計り知れない人々の呼吸の繰り返しを経た原子で満ちている感じ。

ちなみに、今回、以前から見てみたいと思っていたドムシー男爵のお城の食堂の壁画がほぼ全部揃った。本来、大きな窓がいくつもあるお城の食堂に、あれらが自然光の中で庭の樹木の緑と並んで、絵と現実の風景が溶け合っていたに違いなく、どれだけ美しかった事だろうと想像した。















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# by hipoiho | 2018-03-10 13:12 | 鑑賞など

グリーンランド

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知人に強く勧められたので、「グリーンランド」中谷芙二子+宇吉郎展を見にエルメスギャラリーに行く。
またしても「石」に釘付け。
グリーンランドの石はかなりバラエティ豊富で色も華やか。
ここのところ地学付いている。
中谷宇吉郎は世界で初めて人工雪を作った人で、「雪」っていう岩波文庫の本で有名。
次女の芙二子がアーティストで人工霧の作品が代表作でエルメスでも人々が霧の時間に合わせやって来て仁王立ちしている姿はちょっと笑える。
ちなみに長女は地学の学者で三女はピアニストらしい。
そんな少女漫画みたいな家族、本当におるんやなあ。





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# by hipoiho | 2018-03-04 16:20 | 鑑賞など

いとをかしきもの

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小村雪岱展を見る。
まとまった実物を初めて見て、この人の仕事、かなり好きかもしれないと思う。

以前は、「女の人の顔がまんま春信やんけ」とかしか思わなかったが、ちゃんと見たら建物しか描いてない風景とかが、そもそも面白い。
絵巻の吹き抜け屋台と大正モダンのパースペクティブを融合したような不思議な空間に誘われる。歌舞伎とか新劇の舞台美術とか木下恵介の映画の美術とかもやってたみたいだから、きっと劇の空間の感覚も入っている。江戸文化の血肉の上に独自のモダニズムがあり、それが同世代の美術アカデミズムとは一線を画している。

それから雪岱&鏡花の製本デザインに見られるような、甘過ぎず、やり過ぎず、それでいて繊細な蝶々とか小花とか着物の柄とか、模様の絶妙なチョイス。これは理屈抜きにキュンキュン来る。

人物に関しては、登場人物たちの心理とか関係性が、そこはかとなくドライに描写され、引き算された画面に散りばめられているのもカッコ良い。これは映画とか舞台とか後のドラマの作り手に影響を与えたに違いない。

泉鏡花にも無く、鏑木清方にも無く、ましてや竹久夢二にも無い。雪岱は近代以降に「いとをかし」をキラキラなまま表現した稀有な人だなと思った。













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# by hipoiho | 2018-02-23 18:42 | 鑑賞など

フィジカルなもの

Ryoji Ikedaという人の「Supercodex」というアルバムとたまたま音楽アプリで出くわす。
音楽にはあまり明るく無い自分にとっては、なんか物凄く集中出来る一定のノイズの集積。
始まった途端集中力がMAXになるので、音楽というより、低周波肩もみ器のスマホアプリ版くらいのフィジカルさである。音楽を超えて、もはや集中のために便利ですらある。(洗脳されてるの、か? )
急に20年くらい前に1回だけ見たダムタイプという人達のパフォーマンスを思い出した。検索したら、実際ダムタイプの音楽担当者だった。
わたしがこの長い年月を超えて覚えてるくらいだから、やはりただのカッコ良いノイズ音楽では無いに違いない。
でもこの音楽は舞台で爆音で聴くより、美術館でオシャレでグラフィカルな映像と一緒にインスタレーションとして鑑賞するより、イヤフォン経由でスマホから聴くのが一番似合うとわたしは思う。







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# by hipoiho | 2018-02-09 22:46 | 鑑賞など

石を拾うという事


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日比谷図書館文化館で、若林奮が洞窟絵画を見るためにフランスに滞在した時の事をその時同行していた奥さんが話す講演会があるというので行ってきた。
色々面白かったが長くなるので書かない。
でも、この滞在がその後の制作の原点になった事は確からしい。(「若林奮ノート」という本に本人も色々詳しく書いてもいる。)

同時に本をテーマにした今の作家の展覧会もやっていて、これもよかった。(地味だけど、現代美術で久々のあたり。)
若林さんに関しては、フランスで拾った石とか、スケッチブック(全部のページをめくる映像があった)などが展示されていた。
 若林さんはマップケースに石を整列してしまっていたらしく、その棚ごと展示されていた。

石を拾うというのは、ものをつくる人間にとって、何かとっても根元的な事につながっている行為に違いないと再度確信した。

あと、エジプトについては若い時から晩年まで一貫してかなり憧れみたいなのがあったというのをはじめて知った。
エジプトで撮影した、犬が3匹川の向こうからこちらを見ている写真をすごく大事にしてたらしい。






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# by hipoiho | 2018-01-21 17:36 | 鑑賞など